高価な宝石を守る警備員の心得
セキュリティ本部 警備部
私達イセットは主に機械警備や常駐警備で知られていますが、お客様のご依頼によりいくつかのイベント警備や交通警備も行っています。その中で年に2回、夏と冬に行うイベント警備で、宝石・アクセサリーの新作発表・販売会の会場警備があります。
ホテルの一室を会場とし、秋・春の新作を発表、気に入っていただいたお客様にはその場で売約をするという、会場の雰囲気も来場されるお客様も非常に品位あるイベントを、会場準備から撤去までの間24時間体制で、昼は会場内への不審人物の出入を防止し、夜は事故・盗難から高額な商品を守る為に交代で監視を続けるのです。
通常イベントというものは屋外で行われるものも多く、当然真夏の炎天下でも、雨が降っても雪が降っても警備を続けなければならない過酷なものです。それに対してこのイベントは屋内のホテルの一室でエアコンも効いているし、不審者も入り辛い(ホテルのロビーと会場の受付を通らなければいけない)ので、現場の警備員から見れば「楽な警備」という印象を持つのも仕方ないかもしれません。正直言いますと私にも最初はそういう気持ちがありました。
イセットの交通・イベント警備課にはこの道10年以上のベテラン隊長がおります。私もこのイベント警備に応援として携わった時、この大先輩から指導を受けました「ここのショーケース1列分でいいから、いくらの商品が陳列されているか見ておきなさい。」宝石類に特に興味の無かった私は、警備が開始されてからその時初めて商品の値段を見ました。1個のアクセサリーで数十万、数百万はざらで、中には数千万のものもあります。とにかく普段見慣れないゼロの数なので一瞬で見当が付かないものばかりなのです。ちなみにそのショーケース1列分で億を越えていたと思います。「これだけのものを守っているのだという自覚を持って警備にあたって下さい。」その言葉を聞いて自分の中に油断があったということを強く実感し、身が引締まる思いでした。
このイベントの警備をイセットが任されてから一度も事件・事故は起こっていません。もちろん怪盗の予告状なんて届きません。
前回の110番事件の記事を読んで期待していた方もみえるかもしれませんが、このようなイベントでは何か起きたら警備は負け。犯罪を「防止」する為に警備員がそこにいるのですから。皆さんが買い物をしたり、レジャー施設で楽しんだりしている裏側に、油断なく犯罪の防止に努めている警備員の姿があるのです。